自動車のヘッドライトには、通常使用するロービームと、街灯などがなく対向車もいない場合に強力な光で前方を照らすハイビームの2つのモードがあることは常識でしょう。
ですが、現在、車検でヘッドライトの光軸検査を行う際にはロービームで実施することはご存知でしたか?
ここでは車検の光軸検査がなぜロービームで行われるかを説明します。
自動車のヘッドライトは2種類の前照灯で構成されています。
これがロービームとハイビームです。
この2つの前照灯の違いは、光の照射距離です。
ロービームの照射距離が40メートル程度に対し、ハイビームは100メートルほど先まで光が届きます。
道路交通法によれば、原則ハイビームを使用することになっており、他の車両の交通を妨げとなる恐れがある場合などに限りロービームを使用することになっています。
しかし、実際にはほとんどの車がロービームのまま走行する傾向にあります。
これは、車のライトスイッチをオンにしたときのデフォルト設定がロービームであるため、切り替え忘れるドライバーが多いことが原因とも言われます。
2015年8月31日までは、ヘッドライトの光軸検査はハイビーム設定で行われていました。
車検の基準となる明るさは、2灯式では15000カンデラ以上、4灯式では12000カンデラ以上とされ、最高光度は合計で22万5千カンデラを超えないことという基準です。
しかし、2015年9月1日以降、この検査方法が改定され、ロービームでの検査に変更されました。
1998年9月以降、国内で生産される自動車のヘッドライトの設計はロービームを基準として行われるようになりました。
そうなった理由は日本の道路事情にあります。
街灯が十分に普及したこと、交通量が増加したことから、日本国内においてはハイビーム走行する必要性が減少しました。
そのような背景を受け、2015年の検査方法改定へと結びついています。
実は、1998年に当時の運輸省が検査基準をロービームに改定されることが検討されましたが、その当時はロービーム用に対応した光度と光軸の検査機や検査場が普及していなかったため、新しい設計基準に対応した検査を行うことが困難でした。
2015年に、ロービームによる光度と光軸検査を行う環境の普及がようやく約9割に達したことで、2015年9月1日に検査基準が改定され、ロービームでの車検検査が行われるようになりました。